豆本で旅をしよう おうちでGoTo-02

旅の写真の整理を始めたら

自由に旅行ができない日々が続いている。コロナ禍前は、仕事柄一年の半分近くをいろいろな地域に出かけていたが、これだけ長い期間どこにも出かけずにいるのは初めてかもしれない。

少しでも外出気分が味わえるのではないかと思い、これまで出かけた地域で撮ってそのままにしていた写真の整理を始めた。これが結構たくさんある。数十年分、しかもパソコンに放り込んだきりのものも多い。自分のズボラさにも呆れるが、久方ぶりに見返す写真は、当時を思い出し、なかなか興味深い。

しかも、ある時期から写真の枚数が異様に増えていることに気がついた。スマホを使い始めた頃からだろう。出張先では写真を撮っておかないといけない場面もあるので、必ずカメラ時は持参していたのだが、それでもカメラを構えるのとスマホとでは容易さが違うということだ。

これだけ写真があれば、何かつくれそうだ。あんまり大変な作業はしたくない…けど、写真を中心にした旅の記録や旅先案内のようなものはできそうそうだ。そんなことを考えながら写真を眺めていたら、おもしろいことに気がついた。

自分の興味の気づき方

カメラを使っていた時代は必要な写真しか撮っていなかったけれど、スマホになってからはちょっと気がついたものやおもしろそうなものなど、一見不要な写真が増えている。写真撮影の敷居が低くなったことを感じるのと同時に、スマホで気まぐれに撮影した写真にこそ、意識していなかった自分の興味が映し出されていることに気がつく。

窓から外を眺めた写真が多い。

設計を生業の一つにしている私にとって、窓というディテールは、興味があるものと同時に、窓枠がつくりだすフレーム効果というか、絵画のような見え方におもしろさを感じたのだろう。

なるほど、そんなものを自分はおもしろがっていたのかと妙に感心する。

実は、ものづくりをするときに一番大切なのは、ものをつくる技術よりも、その内容。ソフトといわれる部分だ。しかもその部分は、自分がおもしろいと思っていることの方がいい。その方が実感を持ってものづくりができるから。「これおもしろいの?」って疑問を持ちながら作成すると、その疑問はどこかしらに出てしまう。

でも、なかなか自分の興味を客観的に捉えることは難しい。「旅行が好きだ」というのは簡単だが、その旅行のどの部分がどのようにおもしろく感じているかを明確にできると、その人の個性が際立っててくる。でも、それが難しい。

たとえば、旅先で「気がついたものを撮影し、後から俯瞰して見れるようにする」というような、一見無駄と思える作業を自分の癖として身につけておくと、しばらく続けることで自分の興味のの特徴が見えてくる。

これがアイデアづくりの近道になる。無理して自分の興味のないことをテーマにするよりも、アイデアを膨らませたり幅を広げ、またその興味にも納得して作業を進めることができるだろう。この経験をしておくことは、今後いろいろなアイデアを構築していくときの参考になるだろう。

豆本にしてみた

とはいえ、スマホで撮った写真はそこまで美しいわけではないし、これだけ枚数があると、立派な冊子にするとかさばりそうだ。ということで、豆本をつくることにした。

豆本についてウンチクを語ったらきりがない。元はドールハウスの要素の一つとして19世紀のヨーロッパでブームになったといわれているが、同様のものは中国にも日本にもあり、ミニチュアというのは、誰もが興味を惹かれる分野なのかもしれない。

大きさも実は色々と規格があるのだが、ドールハウス等に組み込む予定がないのであれば、あまり意味を持たない。マイクロブックといってどれだけ小さくつくるかを競うジャンルもあるが、それは手作業で文字や絵をどれだけ細かく描けるかを競うものであって、パソコンでプリントして作成をする私たちにとってはあまり意味を持たない。

ただし制作方法は、本来のハードカバー書籍と同様に糸かがり綴じでおこなう。大きさはある程度小さいけど、普通に内容を読めるくらい。全48ページをA4サイズのプリント用紙一枚に割付したいので、35mmx45mmサイズにした。

細かい制作方法はここでは割愛するけど、「つくらし」では豆本づくりのワークショップもやっている。興味があったらページ下の「お問い合わせ」からメールしてね。「つくらし」製本治具を使うと、糸の絡みや緩みなく結ぶことができるのでオススメ。

今回の豆本のタイトルは「窓旅」。とりあえずPART-4までできた。表紙や奥付があるので、一冊につき23見開きあって、それが4冊だから92枚も窓写真を撮ったわけだ。でもまだ数冊分作成できそうなくらい写真がある‥‥

表紙は窓っぽく四角い切り抜きを、見返しの色紙もカーテンぽくくり抜いてみた。どうだろう?