「つくらし」では東京時代も含めて20年以上リクガメさんたちと一緒にくらしてるよ。
リクガメさんたちはよく飼育の指導書籍などで紹介されるような飼育セット（ケージや照明、保温器具）や市販のカメの餌は使用せず、室内と庭を自由に行き来しながらくらしている。
ここではそんなリクガメさんたちとのくらしぶりについて紹介していくよ。
リクガメさんの種類
「つくらし」にいるリクガメさんはヨツユビリクガメと呼ばれる種類。ホルスフィールドとかロシアリクガメ（ただしロシア国内にはほとんど生息していないらしい）、マルイシガメとも呼ばれている中央アジアに生息している種だよ。上から見ると甲羅がまん丸なところがかわいくて気に入っている。
リクガメの中でも飼育の入門種といわれることもあるけど、それはかつて流通量が多く安価で流通したからのようで、とりわけ飼育が簡単というわけではないと思うよ。けど日本の気候にも対応できるようで慣れれば元気に動き回ってくれる。ただし梅雨時期などの湿度の高い時は辛いよう。湿気がたまらないような環境構築が重要になってくるんだ。
写真は「つくらし」に20年以上いるヨツユビリクガメさん。左がカメチヨさん（メス 甲長175mm 2023年）、右がカメキチさん（オス 甲長120mm 2023年）だ。それ以外にも近年孵化に成功した子ガメたちが数匹いる。
ここで紹介するくらし方はヨツユビリクガメ。地域は東京と沖縄で実践してきたので、まあ、東京以南で、庭もしくは日当たりのいいベランダがある環境での参考にしてもらいたい。東京以南であっても標高が高かったりして冷え込みの強い地域などでは参考にしないでもらいたいよ。
リクガメさんにできること
「リクガメさんって人に懐く？」と聞かれることがあるよ。残念ながら犬や猫のように戯れたり遊ぶということはないよ。彼らにはそもそも「戯れる」という資質は持ち合わせていないようなんだ。
それでも一緒に暮らしている私たちを判別するし、慣れてくると私たちを探したり、見つけてあとを追ってきたり、餌をせがんするようにもなる。
でも、トイレをしつけることは不可能。「つくらし」では自由に部屋の中を行き来するくらし方を推奨しているけど、床材が樹脂タイルやコンクリート、防水加工された木材でフンや尿をすぐに取り除けるような環境ぢゃないと難しいかもしれないよ。
コミュニケーションは「噛みつき」のみ。しかも甘噛みナシ
そして、リクガメさんはほとんど声を出すことができないよ。ご機嫌な時に「ギュッギュッ」と音を出すけど、あれは嘴を擦り合わせている摩擦音。交尾の時にオスが「オゥオゥ」と声を出すことがあるけど、それが唯一リクガメさんが発せられる声だと思う。
なので、基本的にコミュニケーションは「噛みつき」になる。機嫌がいいと噛みついてくる。機嫌が悪くても噛みつく。餌が欲しい時も噛みつく。もっとお腹が減っている時は口を開けて走り寄ってくる。口を開けて走ってくる姿は慣れてない人には怖く見えるかもしれないね。
噛み付いてくるのは大抵オス。それも交尾が始まってからが顕著になるよう。メスはそんなに噛みつかない。
幼体の時は噛みつかれても痛くはないし「ああ、ご飯を忘れていてすまない。」程度で可愛らしく思えるけど、成体のオスの顎の力は強くなっているからとても痛い。野生ではメスの取り合いをしなければならないから、その名残なんだろうけど、春先のオスは常時臨戦体制で私たちにも向かってくる。
リクガメさんたちがくらしているスペースで裸足でいるのはちょっと危険なんだ。
生活スペース
さっきも書いたけど「つくらし」の一階はコンクリートのたたきになっていて、庭とのレベル差はほとんどないよ。これはワークショップスペースと工房として活用するためでもあるんだけど、リクガメさんと一緒に暮らすための設備でもあるんだ。前にも書いたようにフンや尿の処理はしやすい。
そして網戸の下部には「リクガメさん専用扉」を設置してあるからリクガメさんが庭に出かけたい時にすぐに出かけられるようになっているんだ。
リクガメさんたちは、このスペースで自由に暮らし、エサを食べたくなったり、日向ぼっこをしたくなったら、扉を押し開けてそこから外に出かけていくんだ。
リクガメさんの知力
リクガメさんたちは空間の理解は高いようだ。「つくらし」の配置を正確に理解してる。外に出れる扉の位置。私たちが日常的に作業している場所。庭の日当たりのよい場所や、休憩できる日陰、食べられる草が生えている場所をちゃんとに理解している。室内にはそれぞれお気に入りの夜休むスペースまである。
朝、お気に入りの場所で目を覚ましたリクガメさんたちは真っ直ぐ扉に向かっていって外出。日当たりの良い場所で日光浴をして、お腹が空いたら扉をくぐって私たちの作業している室内まで来てエサをねだる。エサを食べたらまた外に出て日向ぼっこ、夕方になって陽が沈む頃には扉をくぐってお気に入りの場所に戻ってくる、まるでサラリーマンのようだよ。
リクガメさんのお食事
リクガメさんたちは庭に生えている野草や、育てている野菜を食べているよ。沖縄では真夏になると野菜も野草も暑さで枯れてしまうので、そんな時には桑の木があると助かるんだ。3mくらいの樹高があればヨツユビリクガメ数匹分を十分に養う食糧になる。常緑樹なので一年を通して安定して餌を供給してくれる頼もしい樹なんだ。プランターでの育成も可能なので、リクガメさんとくらそうと思っている方はぜひ桑の栽培にも挑戦してもらいたいよ。
でも沖縄の場合台風が襲来すると潮枯れしてしまうんだ。信じられないかもしれないけど沖縄に襲来する台風は海水を巻き上げて来るので雨に塩が含まれるんだ。塩にあたると桑の葉は枯れ落ちてしまう。でも大抵の場合は10日もすると新芽がつくのだけど、その間桑の葉を餌として与えられなくなる。真夏の台風襲来だけは勘弁してもらいたいよ。
最後に繁殖について
甲長が10cm超えたあたりからカメチヨさんが産卵を始めたよ。その数年後カメキチさんとの交尾も確認できたので、繁殖の準備にかかったんだ。
何年も試行錯誤を繰り返して数年前から繁殖に成功するようになったんだ。リクガメさんとくらしているのであればぜひ挑戦してもらいたいよ。