二世誕生 リクガメさんの繁殖

10年目くらいからカメチヨさんが卵を産むようになったよ。カメキチさんとの交尾が確認されたのがその後数年後。当初は自然に任せて孵化するのを待っていたんだけど孵らない…。

カメウサ孵化

沖縄の雨の降水量はハンパない。しかも「つくらし」の庭は水捌けが悪く毎度のように庭全体が大きな水溜まりになって水没してしまう。
もしかしたらその時に卵が窒息してしまったのではないかと考え、孵卵器での繁殖を試みることにしたんだ。
ここでは「つくらし」での繁殖方法を紹介するよ。

繁殖の開始

「つくらし」のリクガメさんたちはそれぞれ甲長が10cmを超えたあたりから交尾への活動を始めたよ。それまではスペースを区切って別々に生活してもらっていたんだけど、カメチヨさんが放卵(無精卵)を始めたり、お互い匂いを嗅ぎ当てて仕切っているレンガをよじのぼって顔を突き合わせるようになったりしたので、仕切りを外して同じスペースで暮らしてもらうことにしたんだ。

これが標準なのか、カメキチさんのカメチヨさんへのアプローチは強烈。ヘッドバギングで近寄り、甲羅アタック、カメチヨさんの四肢に噛み付き、背後に回ろうとする。
この時点でカメキチさんの甲長は105mm。カメチヨさんは135mmとカメチヨさんの方が大きかったから安心だったけど、メスの方が小さい場合はもう少し大きくなるまで交尾は控えた方がいいかもしれない。それほどアプローチは激しいんだ。この頃からカメキチさんの挙動が凶暴化する。それまでも我々に噛み付くことはあったんだけど、それは餌をせがんだ時だったり理由が想像できたんだけど、カメチヨさんに近づくのは人間だって敵という感じで、見つけただけで噛み付くようになってくる。

何せ沖縄なんで…

本来孵卵器での繁殖には孵化するのに必要な湿度と温度の調節が必要になるんだ。けど、何せここは沖縄。孵化までの期間は沖縄でも湿度の高い(2023年 5~8月 最低湿度53% 平均湿度87%)梅雨の季節。温度も高い(最低気温23.6℃ 最高気温33.9℃ 2023年)ことから、機器を使わずに孵化に挑戦することにしたんだ。

ヨツユビリクガメを含む多くの爬虫類は温度によって性別の産み分けをするんだけど、ヨツユビリクガメの場合はその境目が30℃と言われている。「つくらし」で誕生した子ガメたちはみんなオスっぽいので、メスを誕生させるには加温するシステムを考えないといけないのかもしれない。今後の課題だね。

産卵床と卵

10ガロンの不織布プランターに赤玉土を入れたものを産卵床にしたよ。ヨツユビリクガメは10~15cmくらいの深さに卵を産むので、15cmより深くなるように土を入れる。赤玉土は掘っている時に崩れないくらいに水を含ませておくといいよ。

地面に卵を産んでもらってもいいのだけど、後で掘り返して傷つけないように孵卵器に移さなければならないから、掘り返しやすい産卵床を用意した方が作業がしやすいって考えたんだ。

「つくらし」の庭に日当たりが良くて雨が降っても水没しない場所を見つけられれば、そこで産卵床での孵化も目指してみたいんだけど、いい場所が見つかっていない(2023年時点)。見つけられたらまた報告するよ。

掘り起こした卵は産み落とされた時と上下を間違えないように油性マジックなどで印をつけておくといい。この位置が大きくずれると卵が成長できなくなるんだ。

産み落とされてから数時間は動かしても大丈夫という説もあるんだけど、動かさないことに越したことはないよ。

放卵の間隔

カメチヨさんは、卵を産み始めた年からずっと新月と満月の日の前後2日以内に放卵しているよ。日にちがずれた時は豪雨で産卵床のある庭に出られなかったなど、リクガメさんの問題ではなかったんだよ。

カメチヨさんの一例だけで、どのリクガメも満月と新月に抱卵すると決めつけるわけるではないけど、放卵日時には何らかのルールがあると思われるので、記録を取って、天候や月齢と照らし合わせてみるといいと思うよ。放卵しそうな日の目明日がつけば対応もスムーズにできるからね。

孵卵器というよりは孵卵皿

「つくらし」の孵卵器は超簡単。「器」とつけるのが申し訳ないくらいだよ。

温度と湿度は申し分ない環境なので、空気の循環ができるように囲うことはしなかった。用意したのはステンレスパッドに水で湿らせた赤玉土を敷いたものだけ。孵卵皿と言った方がいいかもしれない。少し窪みをつけて卵がころがらないようにしたけど、もう少し柔らかい素材を使ってもいいと思うよ。

このやり方は「流石に沖縄ならでは」とも言えるけど、住環境の充実により室内の気温は私たちの暮らしやすい気温で安定しているし、7月は梅雨で湿度も高いから、沖縄以外でも立派な装置を揃えなくても負荷は可能かもしれないよ。
でも、必ず近くに温湿計を置いて、温度、湿度の確認は怠らないようにしたいね。
晴れの日が続いて、湿度が下がってきたら霧吹きで水をかけるようにする。敷いてある赤玉土に水が染み込むようにしたよ。

孵化したよ

孵卵器(孵卵皿?)に置いた卵は動かさないようにしておくと2~3ヶ月で孵化したよ。カメチヨさんは正確に新月と満月の日に産卵しやはり満月か新月の日に孵化しているようだ。「ようだ」っていう理由は後で説明するよ。
春先に3~4回放卵するんだけど、後に放卵したものの方が孵化までの日数が短かった。これは後になるほど気温が高かったからと推測してるよ。

「つくらし」のわたしたちは気圧の変化に弱くて、新月や満月の時頭痛などで体調を崩していることが多いんだ。そんな時にカメさんたちも孵化するものだから、最近まで気がついたら孵化していて数日後にうろうろしているところを発見するということが多かった。だから孵化直後は自然に任せておけば特にやることはない。

卵に入っているときは卵の中にぎゅう詰めの形で押し込められていて、しかも甲羅が二つ折りにされているから、孵化直後は甲羅の形は歪んでいて、しかもお腹が折れ曲がっているという状態。しかも鳥と同様卵嚢という臍の緒みたいなものがついているので、扱いには注意が必要。基本は触らないこと。どうしても気になるという人は誕生したコガメを清潔な環境に移しておくこと。水で洗うという人もいるけど、不意に卵嚢にさわってしまい傷つけてしまうのではないかと思うと怖いので「つくらし」ではやってないよ。そのままほっとけば、数日で卵嚢は引っ込み。甲羅の形も丸くなる。その間は餌は食べないけど、卵の殻を啄むことがあるので、卵の殻は一緒にしておくと良いと思う。たまにだけど、力が弱くて卵の殻を割れずに絶命する個体もある。孵化しそうな時期は注意深く卵を観察しておくといいと思うよ。

最初の一週間

早いものであれば孵化後2日ぐらいから、遅いものでも5日後には餌を啄むようになるよ。野草よりも美味しそうな香りのする(たぶん)野菜の方が食欲をそそるよう。「つくらし」では庭で育てているモロヘイヤやチンゲンサイを最初に与えることが多い。一週間もするとフンと尿をするので、一安心という感じだよ。

「つくらし」特製幼体用ケージでのくらし

孵化したら少し大きくなるまでは「つくらし」特製のケージで生活するよ。

特製ケージ写真

空気がこもってしまわないように風通しをよくして、幼体のうちはよく転ぶので、転びにくいように。また、カメさんにすぐアクセスできるように低い。通称アリジゴク型。しかもボール紙製だ。
よく勧めらる水槽は必要以上に深くて空気が混ざりにくい。カメにアクセスするのにいちいち上から手を入れなければならないのもまどろっこしい。しかも垂直のガラス壁面は滑りやすく生まれたばかりのリクガメさんたちは転びやすい。

この「転ぶ」ことについては、なるべく転んで、起き上がり方を学習すべきっていう意見もあるようだけど。それは地面に凹凸や石があって起き上がりやすい自然な環境での話であって、凹凸がつけにくいケージでは難しいと思うんだ。少し目を離した数時間の間にケージの中でひっくり返って起き上がれず体調を崩したり、死んでしまったりしたら相当後悔すると思う。
そこで、このアリジゴク式のケージである。ボール紙で簡単に工作ができるので、ぜひ挑戦してもらいたい。紙製だけど斜面部分なので、ここに尿やフンをされることは少ないので、汚れたり壊れることも少ない。
窓際の日当たりの良い場所に置いてあるから、特別な照明は必要ない。たまには庭に連れ出して直射日光に当てて日向ぼっこをさせるけど、誕生半年くらいまでは直射日光は苦手なようですぐに日陰に逃げ込んでしまうよ。