趣味について考えてみよう
たとえば「レザークラフトを始めたいな!」って思ったとき、どうする?
どんな道具が必要なんだろう? どこに行けば素材が揃うのだろう? なんて考えて、近所でレザークラフト教室を探したりするのかもしれない。今はネットで情報をググって情報を探す人も多いと思うけど、解説書を探しに本屋さんに行く人もいるだろう。
実際、本屋に行くと入門書は何冊もあって、どの本にも製作に必要な道具や購入先などの紹介がされていて、必要な金額や工程がわかるようになっている。それを見て「やってみよう」って思えたら、一冊ぐらい入門書を購入しようということになるのではないだろうか。
でもよく見てほしい。そこに掲載されている作例のほとんどが鞄か財布、もしくは小物入れぢゃないか? 中には本一冊丸々鞄のみ紹介している本すらある。いや、財布と鞄、小物入れ以外の作例ってあるのだろうか?
出版側の事情もわからないではない。なるべく多くの人の要望に対応したいというのもあるだろうが、でもこれだけ揃いも揃ってとなると、「レザークラフト=鞄づくり」というつまらない固定観念が定着するんぢゃないかと残念に思える。実際「つくらし」でもレザークラフトのワークショップでなにをつくりたいかを尋ねると。やはり鞄という要望が多い。
■私たちは革の何が好きなのか、もう一度考えてみよう
鞄なんて、いくつも必要なものでもないから、一通りつくったらそれこそ飽きてしまう。
そうして飽きてしまった場合、それはレザークラフトに飽きてしまったのか、それとも鞄づくりに飽きてしまってたのか。鞄づくりに飽きてレザークラフトをやめてしまうのはもったいないと思うんだ。
そもそも、考えてみよう。私たちは革の何が好きなんだろう? 必ずしも鞄が特別好きってわけではないだろう。多くが革の触り心地や質感が好きなんぢゃあないだろうか。
手で持つもの、触るもの、掴むもの
それなら、日常的に手で掴むもの、手の触れるところにあるものを革でつくってみよう。
そう捉えてみると、レザークラフトの幅は大きく広がる。
日常的に手に触れるもの、握るものをリストアップしてみよう。
スマートフォンや工具。USBメモリから電卓まで。それらを革で包んでみた。
写真の作例のほとんどは、鞄をつくるための技術で充分だ。
下の写真はカメラのグリップストラップ。持ち手を覆うようにカバーするだけで、カメラのホールディングが良くなる。複雑な形をしているけど、左の写真のように革を切り抜けば、後は鞄と同じように縫い合わせるだけだ。
ただし、工具や芽切り鋏の持ち手のように、持ちやすさを考え湾曲しているようなものを革で包むには、ちょっと工夫がいる。その技術を紹介しよう。
ウェットフォームングを覚えよう
革は濡らすと伸びる。この特性を利用して整形する作業をウェットフォーミングという。
写真はiPhoneカバー。iPhoneと同じ形の型を木で作成して、そこに濡らした革を押し付けて成形した。こうやって本格的にやろうとするとこの作業は大変だ。でも簡単にやる方法もある。革を濡らして、そのまま革を貼る部分に押し付けて、革を伸ばしながら縫い合わせてしまうのだ。ただし本体が金属製だったり、iPhoneのような精密機械の場合は、錆びたり壊れてしまうので、あらかじめ本体をラップで包んで、絶対に水が染み込まないようにしてから、濡れた革を巻いて仮止めする。革が乾いてからラップを取り除き、改めて縫い合わせるのだ。
一回革を湿らせてしまうと、革は硬くなる。だが、このようなカバーにするなら問題はない。革を部分的に濡らすと乾いてからシミになることがあるので、革全体をしっかり濡らすこと。
これが成功へのコツだ。